夫が亡くなってすぐ、悲しむ間もなく書類の山がやってきました。
書類が片付いたころ、今度は不安がやってきました。
このまま働き続けられるのか。老後はどうなるのか。ひとりで家を維持できるのか
不安というのは、人を焦らせます。 焦ると、判断が鈍る。 あのとき、わたしはそれを身をもって経験しました。
立ち止まったのは、一言のおかげ

夫が亡くなってしばらく、わたしには2つの引け目がありました。
パートであること。そして、国保であること。
役所で手続きをした際に、「国保は社保に入れない人の保険ですから」と言われたことがあります。悪気はなかったと思います。でも、その言葉はじわじわと刺さりました。
そんな頃、夫の幼馴染で事業主の方から声をかけていただきました。夜勤をやってくれるなら正社員でもいい、と。
転職すれば、2つの引け目が一気に解決できる。 こんなありがたい話はない——そう思って、飛びつこうとしていました。
急いで転職しようとしていたとき、話しかけてきた女性がいました。
「夫を亡くしたダメージは、ひとりになってから出てくるものよ。 子どもが卒業したら、あなたが食べていければいい。 健康が一番。」
その言葉で、立ち止まりました。
詳しい業務内容や夜勤の回数をしっかり確認していませんでした。
気持ちが焦っているとき、人は情報を正確に読めなくなります。自分に都合のいいように解釈して、飛びつきたくなる。あのとき、わたしがまさにそうでした。
その女性は、40代で夫を見送った人でした。
ひとりの生活費を、紙に書き出す

高校を出てからずっと、学費も生活費も自分でまかなってきました。そのせいか、家計の管理はわりと得意な方です。
まず、月いくらかかるかを書き出してみました。
📋 わたしの生活費
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 食費 | 40,000円 |
| 日用品 | 4,000円 |
| 光熱費 | 20,000円 |
| 携帯・Wi-Fi | 8,000円 |
| 美容・被服 | 20,000円 |
| 医療費 | 10,000円 |
| 交際費 | 20,000円 |
| 固定資産税・予備費 | 18,000円 |
| 合計 | 140,000円 |
| 車の維持費 | 20,000円 |
| 総合計 | 約160,000円 |
固定資産税は月割りにすると少額ですが、予備費として余裕を持たせて、トータル月15万円前後あれば大丈夫という計算になりました。
車の維持費を含めても16万円ほど。 案外、どうにかなるのでは——そう思えた瞬間でした。
🎓 子どもにかかるお金

夫が最後まで心配していたのは、子どもが無事に大学を卒業できるかどうかでした。
| 項目 | 概算 |
|---|---|
| 学費 | 100万円 |
| 生活費 | 200万円 |
| 年金・国保 | 40万円 |
| その他 | 10万円 |
| 合計 | 約350万円 |
少し余裕を持たせた額を、手をつけずに置いておくことにしました。
🏠 家の修繕費

家は築30年近い、小さな一軒家です。ひとり暮らしには少し大きいけれど、賃貸の家賃を考えるとおそらくこのまま住み続けるでしょう。
| 項目 | 概算 |
|---|---|
| 水回りの改装 | 150万円 |
| 外壁塗装(2回分) | 200万円 |
| シロアリ駆除 | 50万円 |
| その他修繕費 | 100万円 |
| 合計 | 約500万円 |
売った方がいいのか、賃貸の方がいいのか、ここはまだ思案中です。
案外、どうにかなる

結論、生命保険には手をつけていません。
悲しみの中でまとまったお金が入ると、さみしさからあっという間に使ってしまう人もいるそうです。
「お金を溶かす」という言葉を、そのとき初めて知りました。
遺族年金とパートの収入で、ひとりの生活はまかなえる。その範囲で生きていくと決めて、転職はしませんでした。今も同じ職場のパートを続けています。
不安で動くのが、いちばん危ない——あのとき立ち止まれたのは、あの女性の一言のおかげです。


コメント