夫の車を、手放す日

夫が乗っていた車は、普通車でした。
亡くなってからも、職場の荷物や遺品の整理に何度も助けてもらいました。車に詳しいひとではなかったけれど、買ったときの笑顔が素敵でした。
乗って10年以上。安全性が不安になってきたのは、わかっていました。
でも、車庫に車があると——不思議と、夫がまだ家にいるような気がするのです。
当然のように運転席に座る夫、助手席のわたし、一緒に行ったドライブのあれこれ。車を手放したら、そのすべてが消えてしまうような気がして、ずっと踏み出せずにいました。
変わることが怖かったのだと思います。もう、変わってしまっているというのに。
動けた理由

ある日、ふと思いました。
「見栄は、夫を荼毘に付すときに一緒に捨てたはずじゃなかったの。」
住宅街だから、人の目が気になっていたのかもしれない。古い車を使い続けることへの、なんとなくの後ろめたさ。でもよく考えれば、それは誰のためでもない感情でした。
思い立って、「中古車 買取 見積もり」と検索しました。
一括見積もりの、落とし穴

一括見積もりのボタンを押した瞬間——電話が鳴り止まなくなりました。
1秒も経たないうちに、何十件もの着信。話している最中も別の電話が入り続けて、会話に集中できない。「今だけこの値段」「1週間で金額が変わる」。
結局、早く連絡が来た2社に絞り、残りは出ませんでした。それでも、1か月以上は着信が続きました。
これから売却を考えているひとには、一括見積もりはおすすめしません。
わたしが受け取った査定額
| 査定先 | 金額 |
|---|---|
| ディーラー | 10万円 |
| A社 | 30万円 |
| B社 | 40万円(+3,000円) |
B社の3,000円は、帰り際にぽろっと「足がなくなっちゃうな」とつぶやいたら、交通費として追加してくれたものです。
もっとうまくやる方法があった
あとで知ったのですが、MOTA車買取というサービスがあります。
オンラインで査定を受けると、上位3社だけが連絡してくれる仕組みです。何十件もの電話に怯える必要がなく、時間も体力も使わずに済む。
何事もお勉強、ですね。
実際、子どもが車の買い替えをする際使ったのですが、静かに査定ができたとのことでした。
次の車を選ぶ

田舎暮らしに車は欠かせません。贅沢品だとはわかっていても、ここでは必需品です。
ふと、無類の車好きだった兄を思い出しました。相談すると、楽しそうに探してくれました。
わたしが決めた条件はこうです。
- 軽自動車
- 予算150万円(手出しは100万以内)
- メーカーはこだわらない
- 電動スライドドアは不要
- ドライブレコーダーと安全装置はほしい
兄が候補をいくつか出してくれて、そのなかから直感で選びました。色は白。査定のときに「黒か白は値段がいい」と聞いていたので。
夫の車を40万円で下取りして、軽自動車へ。少しだけ予算オーバーでしたが、納得のいく買い物でした。
入れ替わった朝

車庫に、新しい車が入った朝のことを覚えています。
少し、さみしかった。
でも——これからのわたしには、これがちょうどいい。小回りが利いて、運転しやすくて、維持費も抑えられる。ひとりで生きていくのに、ぴったりの相棒です。



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